Double Time/Half Time/Double Time Feel/Half Time Feel について

以下の4つは、リズムに対する用語ではなく、アレンジ等する時に使用したりする用語です。
それぞれの言葉が非常に似ているせいなのか、演奏者の中でも人によって言葉の定義が違い混乱が見受けられます。定義づけがはっきりしていない中、言葉とその意味を丸暗記しただけでは実用的ではないので、具体例をしっかりと頭に叩き込み自部の言葉で理解し説明できるようにしましょう。

※以下の2つは(ダブルタイムとハーフタイム)アレンジに使われる用語です。演奏する前に「ここからダブルタイム(またはハーフタイム)でお願いします」という感じで使用します。

Double Time 
(通称 倍テン ダブルテンポと呼ばれることもある) テンポが倍になること。
It Don’t Mean A Thing 
ヴァースの最後の小節 (0:38部分) を、倍にしたテンポで2小節分のドラムのフィルインでコーラスに入る。(残念ながらこの演奏、厳密に言うと2倍ではないのですが… でもこのダブルタイムのきっかけ作りって正確に倍のテンポで演奏するのって結構難しいのです!)

Half Time   
(通称 半テン ※ただし私自身は実際に聞いたことはありません。ネットで調べていく中で、この言葉を使っている人は複数いました) テンポが半分になること。 こちらはアレンジ的に使われることがほとんどです。(セッションではあまり使わないかな… そして参考音源も見つからない…)

※以下の2つは(ダブルタイムフィールとハーフタイムフィール)1拍をどのように感じて演奏するか?を表す言葉です。

よく使われるシチュエーションとして

①スローで演奏していたのを、1小節の中で拍の感じ方を倍で刻み演奏をアップテンポにする⇒ダブルタイムフィール(ただし1小節にかかる時間は一緒)

②アップテンポで演奏していたのを、1小節の中で拍の感じ方を半分で刻み演奏をゆっくりになったように感じさせる⇒ハーフタイムフィール(ただし1小節にかかる時間は一緒)

両方とも1小節にかかる時間は変わらないので、演奏者の判断で事前に打ち合わせなしで演奏することが可能です(特に間奏時でのダブルタイムフィール)

またその応用で、アレンジとして最初からスローの曲を早く演奏する時、または速い曲をスローで演奏する時などにも、この2つの言葉は使うこともできると思います。(あまり一般的な使われ方ではないので、これらの言葉だけでは伝わらないかもしれません。もし伝わらなかった時でも違う言葉で伝えられるように、しっかりと自分の言葉で理解しておくことが大切です。

Double Time Feel * (こちらをダブルタイムまたは倍テンと呼ぶ人もいる)
1小節をテンポを上げて2小節に感じるように演奏すること。ただし、1小節にかかる時間は変わらないので、あくまでも早くなった感じ。(だからダブルタイムフィール。ダブルタイムっぽく感じられるって覚えておけばOK)一般的にはスローの曲をアップテンポな雰囲気にする時に使用する。

When You Wish Upon A Star <Stardust Revue>
アカペラによる演奏。この曲の一般的に出回っている楽譜だと通常 When you wish up- で1小節だが、この演奏は2小節で演奏しています。

Half Time Feel *
2小節をテンポを下げて1小節に感じるように演奏すること。ただし、1小節にかかる時間は変わらないので、あくまでも遅くなった感じ。
一般的にはアップテンポの曲をスローな雰囲気にする時に使用する。

Tea for Two <Bria Skonberg>
先に紹介したナットキングの枯葉でのハーフタイムフィールの使われ方は、あくまでも楽譜の読み方です。演奏での使われ方の見本は短いですが、この演奏の 2:05 – 2:09 の間の演奏になります。この演奏は4拍子と3拍子が入り乱れる複雑なアレンジで、更にこのハーフタイムフィーリングを使ってから(元のフィールに戻して)フェイクコーラスに展開していくという、かなり凝ったアレンジになっています。

Autumn Leaves <Nat King Call>
この演奏の1小節は、この曲の一般的に出回っている楽譜だと2小節分。ただしこの曲は楽器の演奏でアップテンポでの演奏が有名になりましたが、元々はスローの曲なので、本来はこの演奏の雰囲気がオリジナルに近いです。このように、どのヴァージョンがオリジナルなのか?よりも、どのヴァージョンが一般的なのか?が大事だったりすることがよくあります。

※1 Double Time Feel とHalf Time Feel は共にあくまでも1拍をどのように感じるか?を表す言葉です。アレンジとして使う時は「この楽譜をDouble Time Feel(又はHalf Time Feel)で〇〇のリズムでお願いします」というのが丁寧な使い方です。ただし、ジャズのセッションでは早くなる(風)んだからスウィング、遅くなる(風)んだからスローという事は、まあ予測できるので省略されることが多いです。だからミスティーをサンバで演奏したい時などは「この楽譜をDouble Time Feelでサンバのリズムでお願いします」が一番確実な伝え方です。(まあ、演奏者も「ミスティをサンバでお願いします」で、だいたい分かるのですが、たまに曲によっては演奏してから拍の感じ方を間違えて、「あれ?」っていう時があります。

※2 この4つの言葉と類似の現象として、テンポを3倍にしたり1/3にしたりするものがあります。こちらは特に決まった言葉はないようです。

After You’ve Gone <BENKO DIXIELAND & RÉKA KOÓS>
テンポが88くらいで始まりますが 1:45 のドラムをきっかけに、ちょうど3倍のテンポ264に変わります。(ただしコーラス部の拍の感じ方は、テンポが速くなってからはダブルタイムフィールで演奏されていますので、純粋にテンポが3倍になったわけではありません。)また 2:53 でのトランペットの 3連フレーズをきっかけに、だいたい1/3の元のテンポとフィールに戻っています。

You and the Night and the Music <Emmet Cohen w/ Veronica Swift>
この演奏は最初、ハーフタイムフィーリング テンポ61くらいで始まり 1:18 のベースをきっかけに約3倍のテンポになっています。(拍の感じ方は一般的なものになっています)その後 3:57 前後でいったん演奏を止めてからテンポとフィールを最初に戻し少し間奏的なものを挟んでから最後の8小節を演奏します。※さらにこの演奏では 4:19 あたりからベースがハーフタイムフィーリングから、この曲の一般的な拍の感じ方に変えてエンディングに突入しています。

テンポを3倍にする時テンポが速すぎて歌詞が上手く歌えないような時は、上の2つの参考音源のように純粋にテンポを3倍にするのではなく、テンポが変わるどちらかの方をダブルタイムフィールまたはハーフタイムフィーリングにすると音楽的に解決できます。