アドリブと即興演奏との違いについて

この質問は、時々受ける質問です。結論から言いますと、通常ジャズで演奏する上では、特にこの両者の間に特別な意味を込めて言葉の使い分けをしていることは、あまりないかと思います。

ウィキペディアで調べてみても、アドリブのところには即興演奏ともいうと書いてあり、即興演奏のところにはアドリブとも言う。と書いてあります。そして、ジャズを演奏する上では、その認識でも問題はないと思います。

問題が出てくるのは、オーソドックスなジャズ以外の演奏の時に、アドリブと即興演奏を使い分ける時がありますので、理解しておいたほうが良いと思います。

簡単に言いますと

アドリブ
多くのジャズを演奏する時のように、予め用意されたコード進行の沿っての演奏

即興演奏
何も用意されていない状態で演奏するのが基本。したがってコードの展開があった時でも、それは瞬間、瞬間演奏者が自由に決めている

したがって基本的には何も決めごとがないフリージャズのような演奏や、その真逆として、美しいメロディーとコードの響きがあるけど即興演奏のもの、例えばジャズの中で最も有名な即興演奏であろうキースジャレットの「ケルン・コンサート」に対して 「あのアドリブは~」と言ったり するのは、少し違和感があります。

あーなんて美しいのでしょうか… ある意味究極の音楽。この演奏をライヴで聞いた人は一生自慢できると思います。超うらやましい。

この演奏に対しても、フリージャズの時と同じように「このアドリブ演奏はさ~」という言葉の使い方は、意味は通じますが、やはり違和感を感じます。

またクラッシックなどでみられる、モチーフをその場で展開して演奏も、多くの場合、コード進行は(パターンはあるにせよ)その場で決めていきますので、この場合もアドリブとは、あまり言わないような気がします。

ただ、言葉の定義、使い方などは、さして重要ではありません。大事なことはアドリブができるからといって即興演奏ができるわけではないことです。 (その逆のケースも) たまに、そこらへんの違いが判らずピアニストに無理難題をリクエストされるかたが(夜明け前の草原のイメージで…など)いらっしゃいますが、無理なものは無理なのです。

確かにジャズの演奏の中で、ピアニストがイントロの部分で少しだけ、その曲のコード進行に基づかない即興演奏をすることはあります。ただ、まだまだこのような方法をジャズの中で積極的に使われているような状況ではないと思います。私も、現時点では、かなり苦手な演奏手段ですが、 興味があり、いつかは即興演奏ができるようになりたいとは思っています。でも、きっと遠い遠い日の出来事になることかと思います…