エクステンディッドドミナントに間違えやすいセカンダリードミナント

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今回は表題の通りエクステンディッドドミナントに間違えやすいセカンダリードミナントについて解説したいと思います。まずは下の楽譜を見てください。

この楽譜はジャズの中ではスタンダード中のスタンダードチューン、All Of Me の冒頭の8小節です。
既に分析されている部分は今まで学んできた範囲で分析できるとことです。
今回は、上の楽譜で、分析されていない3小節目のE7について解説していきたいと思います。

E7はA7に対して5度上からのドミナントモーションですのでA7に向けて矢印を書きます。A7はセカンダリードミナントなのでE7は連続したドミナントという事でエクステンディッド・ドミナントと分析しちゃいそうなところなのですが、これは基本的に最優先選択肢ではありません。(回りくどい言い方で申し訳ないです)

E7をエクステンディッド・ドミナントと分析しない理由は、ドミナントの連続のスタート地点にあります。エクステンディッド・ドミナントとして分析するには、連続したドミナントのスタート地点は強拍小節でなくてはいけません。このE7は2小節ずつ動いていく4つのコードがある中で、2番目に現れるので、強、弱、中強、弱 の2番目の弱拍ににあたります。よって、E7はエクステンディッド・ドミナントと分析しません。また実際にエクステンディッド・ドミナントの特徴の一つに「軽い転調感」がありますが、この曲を聞けば分かりますが、この部分では転調感は感じられないと思います。

では、このE7は、どのように分析されるのか?その解答は下のようになります。

セカンダリードミナントであるE7は、本当はダイアトニックコードであるⅥ度のAm7に進もうとしたのだが、実際に進んでみたらA7だった。

この感じをⅤ7/Ⅵ を( )で囲むことによって表しています。スケールもAm7に進もうとしていたわけですから、 Ⅴ7/Ⅵ で考えてMixo.♭9、♭13となります。

また実際にこの曲を聞いても3小節目で強い転調感を感じませんので、E7のコードトーン以外の音はこの曲の調性であるハ長調の音階で埋めるのが調性にそった音選びにするのが、曲の基本的イメージだと思います。

では、ここをあえてエクステンディッド・ドミナントとして分析したらどうなるか?ですが、この場合スケールはミクソリディアンになり音階にF#、C#が含まれて、ハ長調の音階以外の音が含まれてきます。これはこれで、演奏不可能ではないとは思いますし、場合によっては予想外の響きが聞けて演奏がエキサイティングになるかもしれませんが、調性から離れますので演奏がとても難しくなると思います。ここはやはり曲の基本的なイメージ(オリジナルのメロディーが持つ雰囲気)が転調しているようには聞こえないのと演奏のしやすさを考えて、E7のスケールは Mixo.♭9、♭13 を選択するのが最優先選択肢(以後ファースト・チョイスと呼ぶことにします)だと思います。