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そんな魅力的な音楽なのに…

現実問題として、ジャズは多くの人たち(とくにジャズに興味のない方たち)の前で演奏する機会、触れられる機会が極端に少ないかと思います。これは私をはじめ仕事としてジャズをしている人間の怠慢であり由々しき問題だと思います。

私の話をすれば、小さい頃からクラッシクピアノを習い、中学生で少しだけ吹奏楽と、中学、高校とロックバンドを、高校生の時は県立の普通科ではありましたが、クラッシック音楽を専門的に学べるところに通っていました。そんな比較的に恵まれていた音楽環境にいた私でも、ジャズに出会えたのは、高校生の時、それもほんの偶然によるものでした。

そんな偶然が、「音楽が好きだ!」という気持ちには確信は持ってはいたものの、何をやってもうまくいかなかった当時の私に「進むべき道は、これだ!」と決意させ、人生が大きく変わっていくきっかけになりました。(もしかしたら、大事なことほど偶然によって決まることって多いのかもしれませんね)

このような経緯もあり、私にとってはジャズを、どうにかしてみんなに知ってもらう。そして、それがきっかけでジャズを演奏したり楽しんだりして。そしてそして、願わくば1人でも多くの人にジャズの世界に プロとして挑戦してもらいたい。そして一緒に盛り上げてもらいたい。(私がジャズ界に貢献できているかは未知数ですが)そう願っている私にとって、「ジャズをより多くの人に知ってもらうには?」ということは、どうしても取り組みたいテーマなのです。

ジャズの魅力について

それはズバリ「ジャズにしか出せない音」だと私は思います。もしかしたらジャズの代名詞かもしれないアドリブもスウィングも、詰まるところ「ジャズにしか出せない音」を出すための手段にすぎないのではないか…とさえ思っていたりもします。

ビル・エバンス「マイ・フーリッシュ・ハート」冒頭のとろけるような音

マイルス・デイヴィス「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」の最初のぶっきらぼうなフレーズ

ジャッキー・マクリーン「レフト・アローン」の最初の闇を切り裂くような鋭い音

ソニー・ロリンズの「セント・トーマス」3分55秒頃に突然現れる、まるで「ビッグバンでも弾けたのか!」と叫びたくなるような無限の広がりを感じるサウンド

他にも、キースジャレット、セロニアスモンク、チェットベイカー、ジョンコルトレーン、チャールスミンガス、ジャコパストリアス、ビリーホリデイ、エラフィッツジェラルド、サラヴォーン、阿部薫 まだまだここには書ききれないほど僕を魅了してやまないミュージシャンがたくさんいます。そして、どのミュージシャンも聞いたこともないような音で、今も私の心を揺さぶり続けてくれます。

「ジャズでしか出せない音」「ジャズでしか聴けない音」それは、グルーヴが作り出す渦の中で、アドリブによる心の奥底から湧いてくる祈りのようなフレーズの連続。そんな極限状態で放たれた魂の音。その音が 人を魅了しないわけがない。私は、それを信じて疑うことはありません。

アドリブと即興演奏との違いについて

この質問は、時々受ける質問です。結論から言いますと、通常ジャズで演奏する上では、特にこの両者の間に特別な意味を込めて言葉の使い分けをしていることは、あまりないかと思います。

ウィキペディアで調べてみても、アドリブのところには即興演奏ともいうと書いてあり、即興演奏のところにはアドリブとも言う。と書いてあります。そして、ジャズを演奏する上では、その認識でも問題はないと思います。

問題が出てくるのは、オーソドックスなジャズ以外の演奏の時に、アドリブと即興演奏を使い分ける時がありますので、理解しておいたほうが良いと思います。

簡単に言いますと

アドリブ
多くのジャズを演奏する時のように、予め用意されたコード進行の沿っての演奏

即興演奏
何も用意されていない状態で演奏するのが基本。したがってコードの展開があった時でも、それは瞬間、瞬間演奏者が自由に決めている

したがって基本的には何も決めごとがないフリージャズのような演奏や、その真逆として、美しいメロディーとコードの響きがあるけど即興演奏のもの、例えばジャズの中で最も有名な即興演奏であろうキースジャレットの「ケルン・コンサート」に対して 「あのアドリブは~」と言ったり するのは、少し違和感があります。

あーなんて美しいのでしょうか… ある意味究極の音楽。この演奏をライヴで聞いた人は一生自慢できると思います。超うらやましい。

この演奏に対しても、フリージャズの時と同じように「このアドリブ演奏はさ~」という言葉の使い方は、意味は通じますが、やはり違和感を感じます。

またクラッシックなどでみられる、モチーフをその場で展開して演奏も、多くの場合、コード進行は(パターンはあるにせよ)その場で決めていきますので、この場合もアドリブとは、あまり言わないような気がします。

ただ、言葉の定義、使い方などは、さして重要ではありません。大事なことはアドリブができるからといって即興演奏ができるわけではないことです。 (その逆のケースも) たまに、そこらへんの違いが判らずピアニストに無理難題をリクエストされるかたが(夜明け前の草原のイメージで…など)いらっしゃいますが、無理なものは無理なのです。

確かにジャズの演奏の中で、ピアニストがイントロの部分で少しだけ、その曲のコード進行に基づかない即興演奏をすることはあります。ただ、まだまだこのような方法をジャズの中で積極的に使われているような状況ではないと思います。私も、現時点では、かなり苦手な演奏手段ですが、 興味があり、いつかは即興演奏ができるようになりたいとは思っています。でも、きっと遠い遠い日の出来事になることかと思います…

アドリブを演奏する上での問題点

アドリブを演奏する上で怖いのことは「 音とリズムを外す 」 ことではないでしょうか? 言い換えるとアドリブを演奏する上での問題点とは「どんな音を使って」「どんなリズムを使うのか」ということではないでしょうか?そして、どちらがとっつきやすい問題かと聞かれれば、間違えなく「どんな音を使うか?」だと思います。

リズムに関しては、拍にさえ合っていれば使ってはいけないリズムなんてないはずですし、ここではこういうリズムがかっこいいです。ここではかっこ悪いです。という基準的なものはないはずです。また扱うリズムの種類や組み合わせは、限りなく無限に近いといっても大げさではないと思います。

一方音の方は、基本的に、オクターブの違いはあるものの最大で12音です。しかも演奏する上で、ほとんどの場合コードがあるので、そのコードの音が中心となり、そのコードの音を埋めるような形でスケールができ、それ以外の音は基本的にはコードに対して、または音階に対して経過音的に使われます。

このように、各コードに対して12音が、コードトーン、スケール、経過音、というように3層のレイヤーのようになっていて、音に関しては、「なぜここで、この音なのか?」「この場所で、どんな音を出せばジャズらしいのか?」は、ある程度説明することができるのです。

そうやって、まずはジャズ理論によって、演奏をする時中心になるべき音階をまずは導き出し、練習によってその音階を自由に演奏できるようになって、少なくとも「音は外さない」そういう状態にしておく。またそのような状態になることによって、もう一つの問題であるリズムのことに集中する。少し拡大解釈にはなるかと思いますが、「どうやって盛り上げていくか?」に気持ちを集中させることができ、それができた時に思い切りのよい演奏ができるのだと思います。

このようにアドリブ演奏をする上で、まずは「音を外さない」そういう準備をすることがとても 大事なのことなのです。

ジャズ最強説

私は常々ジャズは数多くのジャンルのある音楽の中で最強だと思っています。(もちろん最高ではなく)理由はジャズを演奏するうえで、どうしても必要なスキルとして「セッション」と「アドリブ」があり、その二つが音楽的にみて、とても魅力的であり、ほかのジャンルの音楽との一番の違いでもあり、特徴だと思います。

ジャズを演奏する事、教えることは私にとっては仕事になります。そして私を含め他のジャズミュージシャンも「なんとなくジャズミュージシャンになった」という方はいないと思います。みんな三度の飯より…的なノリでジャズに接しているはずだし、少なくとも駆け出しのころは、寝ても覚めても… という文字通り夢中になって取り組んでいたと思います。(まあ、長く続けていると、現実はいろいろと厳しいものがありますので、場合によっては、そうではないケースも…)

ですので私も当然ジャズに対しては、相当な思い入れがあるので、「ジャズ最強説」なんて客観的な要素など、ほぼゼロなのと、おごり高ぶっている話であることは分かっています。

ただ「いつでも」「どこでも」「だれとでも」演奏できるようになる。

ある意味楽器を演奏する(もちろん歌も) 人にとって究極の目標であり理想である、この三つの課題

いつでも    たとえ偶然街で初めて会った、そんな時でも
どこでも    楽器さえあれば、たった2人でも、たとえ一人でも
だれとでも   世界中の人々と

を実現しようとするうえで「セッション」と「アドリブ」この二つのスキルは、 最適なツールではないか、またそれを日ごろから慣れ親しんでいるジャズミュージシャンは最強になれるのではないか。そう考えています。 これが、私の言う「ジャズ最強説」の根拠になります。

ただ、これはお互いがジャズミュージシャンの場合の話になります。これがなんとか「音楽を演奏する全ての人々」にまで広げられないか?いち街の音楽家にすぎない私にとっては、いささかテーマが大きすぎる話であり、まず私自身がその域に達していませが、これを私の生涯かけて取り組むたいテーマだと考えています。

即興演奏は本当に楽しいので、どんなジャンルに限らず、全ての演奏者にトライして欲しいです。そして 「いつでも」「どこでも」「だれとでも」 演奏できるようになる。そんな音楽の究極の目標に対してジャズミュージシャンは、大きくアピール、貢献できるのではないかと私は考えています。

コード・スケールに対する疑問

「Dドリアン、Gミクソリディアン、Aエオリアン、つまるところドレミファソラシドと同じでは?なぜ、いちいち分けて考える必要があるのか?そもそもジャズミュージシャンは アドリブを演奏する時に、こんなに細かいことを考えているのだろうか?」と、疑問に思う方は多いかと思います。実際にジャズを演奏している方々でも、あまりジャズ理論に興味がない方が多いのも、このへんが理由なのではないでしょうか。(もちろん感覚でも、素晴らしい演奏はできますし、 それを否定するつもりはありません)

実際に演奏する時、多くのミュージシャンは「ここはドリアンで…」 など、そんなことを考えている余裕はないと思います(少なくとも私はそうです)。では実際に演奏する時、考えていないことなのに、なぜ別のスケールとして考える必要があるかといえば、単純にその方が便利だからです。

例えばキーがCの時の話をします。

コードがCの時はレがテンション(ジャズらしい音がする)ただし、そのレの音もDm7の時はルートの音になり、響き的にはジャズらしい音ではなくなります。ただ、今度はコードCの時に、コード音だったミの音が、Dm7ではテンションの音になります。このように、各コードにおいて、テンションとして響いてくれる音が違います。それを説明するには、 ドレミファソラシド のスタート音をずらして ドリアン、フリジアンなど 別のスケールとして考えたほうが簡単なのです。

では、実際どのように使うかといえば、例えばコードがCの時に「 ♫ ⤵レードシラソー」「♫ ⤴ソラシドレー」などテンションの音を意識したフレーズを使えるように何度も何度も練習します。最初のうちは、恥ずかしいくらい、「テンションの音使ってますから!」くらいの、これ見よがしなフレーズになっても良いと思います(みんなそうやって練習してきたはずです)。そのように 繰り返し練習することによって 、徐々にそれが、感覚となっていき、特に意識しないでも、アドリブ演奏をする上で テンションの音が自然に使えるようになると思います。

メジャーのダイアトニック・コード

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Daiatonic Chords

ダイアトニック・コードとは、ある調の音階(しばらくは長調を前提に進めていきます)上にできる、その音階の音だけを使っているコード。通常は、このタイプのコードが中心となって音楽は作られています。

機能は ダイアトニック・コードを更に細かく分類し、トニック、サブドミナント、ドミナント を略記(T、SD、D )で表します。

※画像をクリックすると拡大します。

スケールディグリ―
各音階上の音に振り分けられている数字。各コードのルートからの音程を元に音階における役割も表示する。
数字のみとR(ルート・根音の意味) コードトーン  T テンションノート S スケールノート 音符は黒丸で表示 

テンションノート
和音の上に重ねると、響きに緊張感が増す音。Tを使って表記する。

トニック(安定)サブドミナント(やや不安定)ドミナント(不安定)の分類の仕方は諸説あります。

ジャズにおいては、Ⅶm7♭5は、ドミナントの動きをすることはほとんどなく、このサイトでは Ⅶm7♭5 の機能をドミナントとしては考えないことにします。(こちらも諸説あります)
いずれるせよ、ジャズを演奏するにあたっては、大事なことはスケールを導き出すことなので、もし分類の仕方に迷っても、あまり気にしなくても良いかと思います。

コードスケール表の記譜、分類表示について

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コードスケール表の記譜・分類表示の見かた

コードトーンとテンションは白玉で表し、スケールノートは黒丸で表します。数字はルートから数えた音程を表します。(1度の音は1と表すケースもあります。このサイトではルートを表すRを使用します)

長音程には何もつけず、短音程のみ♭をつけます (長3度は、ただの3 短3度は♭3)
完全音程には何もつけず、増音程には♯ 減音程には♭をつけます (完全5度は、ただの5 増5度は♯5 減5度は♭5度です)

テンション・ノートにはTをつけ数字にはコードトーンの上に乗る音ということで、ほとんどの場合7より上の9、11、13等を使います。またスケールノートはSをつけます。

語彙の説明

機能  
各コードの役割、種類。略記を使用し円で囲って表します。

アナライズ  
各コ ードが曲の中で、何度にあたるのか、何度に対してアプローチしているコードなのかを表します。度数はローマ数字を使用します。

コード・スケール  
理論によって導き出された アドリブ演奏時やアレンジなどで各コードで使用するスケール名。アヴェイラブル・ノートなどとも呼ばれています。

テンション  
コードトーン以外の音で和音に対して緊張感を与え、かつコード進行に対して阻害しない音。簡単に言うと、この音を使うとジャズらしいサウンドになります。

スケール・ノート
この音を使うと、元のコードの役割を損ねるような音。アヴォイド・ノート(避けるべき音) とも呼ばれてもいます。ただし、この音を効果的にアドリブに使えば、とても魅力的な音として使うことも可能ですので、個人的には注意して扱うべき音、ノーティス・ノートとでも呼んだほうが良いと思っています。

目指す最終形

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まずは、音源を聞きながら下の楽譜を見て下さい。

※画像をクリックすると拡大します。

この楽譜はStella By Starlight のコード進行に合う音をジャズ理論によって選び、それを下はドから上は1オクターブ上のソまでの間をコード進行に沿って機械的に並べたものです。 このようにジャズ理論とは、ごく簡単にいうとアドリヴ演奏やアレンジを行う上で、曲中の各コードに対して、「このスケールを中心に演奏しておけば音は外れないよ」というものを導き出す方法論です。 多くのジャズミュージシャンは、その瞬間、瞬間で演奏すべき音の感覚を、理論的、感覚的、または圧倒的な経験値などにより習得しています。

この曲は比較的、難易度の高いコード進行を持つ曲ですが(=演奏しずらい・音を外しやすい)このようにジャズ理論によって、理論的に難しいとされる曲でも、演奏する上で土台となるべき音並び(=音階)を導き出せます。 そして導き出された音階を反復練習などの努力によって感覚的なものにしていくと、少なくとも「音を外すかも」という恐怖からは逃れられるようになります。ジャズ理論とは、 演奏者の負担をかなり軽くしてくれる便利なものと思ってください。

確かにジャズ理論には 曖昧な事が多 く「これ!」といった正解が出せなかったり、覚えなきゃいけないことが多かったりして、かなりめんどくさいことが多いのは事実ですが、決して難しいものではないと思ってます。このブログを通して、ジャズ理論を、できるだけ簡単に分かりやすくシンプルに説明するように心がけますので、皆さんも頑張って習得して欲しいと思います。