アドリブ練習法

必要なのは才能じゃない。練習、練習、練習、それだけだ。 
マイルス・デイヴィス

みなさん、この言葉を信じて頑張りましょう!

このアドリブ練習法は私が実際にレッスンで使っている初めてアドリブ演奏に挑戦する方のプログラムで、かなりの実績があるものです。このページ下の方に全18行程を記しておきましたが、慣れてきましたら、より重要と思われる★印のついている7つの行程だけでも十分練習可能になり、最終的には初見でも演奏できるようになります。注意点としては私の楽器がピアノという事もあり、説明等がかなりピアノ向きになっているかと思います。(ピアノにはコードが視覚的に捉えやすいというアドバンテージがあります)ただ、練習方法そのもの考え方等は各楽器そんなに違いはないと思いますので、各楽器の特徴(音域など)に合わせて各自工夫して頂ければと思います。

練習のお供にスマホやタブレットのアプリ「iReal Pro」(自動伴奏アプリ)使用すると、とても便利です。

Ⅰ Take The “A ” Train

Ⅱ Autumn Leaves

Ⅲ F Blues

Ⅳ All Of Me

Ⅴ Softly,As In A Morning Sunrise

アドリブ練習 18のステップ 大まかな流れ

各練習課題で説明されていることを、下記にまとめておきました。ほとんどのスタンダード曲でしたら、以下の練習方でアドリブを習得することができると思います。

※ピアニストの方は、各課題を、できるだけ左手(レフトハンドヴォイシング)を(全音符的な長い音でよいので)つけて練習してください。18のステップが終わって、アドリブがワンコーラス位弾けるようになって左手も無意識にコードをつかめるようになったら、両手のコンビネーションの練習をしていきます。

第1部 コードトーンのアドリブ

まずはコードトーンだけで1コーラスくらいのアドリブが自由にできるようになることを目指します。この練習をすることによって、まずはその曲のコード進行(曲の骨格)を体の中に叩き込みます。

※コード進行は、基本的には指紋と一緒でその曲固有のものです。(例外もあります)その固有のものに沿って演奏することによって、その曲をより立体的に表現できると思います。

1.各コードの基本形から始まるアルペジオ(転回形含む)
まずこの曲で出てくる6つのコードに対して、基本形から始まる(3つの転回形を含む)アルペジオを確認します。

2.コードの連結を伴う各コードのアルペジオ
アドリブをする時に、コードを基本形からしかイメージできないのは、自由な演奏を妨げることになります。各コードのアルペジオ開始音を、できるだけ近い音、または同じ音から始めて、 どのコードトーンからでも転回形が演奏できるように、 しっかりと準備しておきましょう。  

3.コード進行に沿ったアルペジオ演奏
コード進行に沿って、各コードのアルペジオをできるだけスムーズに繋げていく練習です。慣れてきましたらアルペジオを上行だけ下行だけのパターンだけでは なく、アルペジオを細かく上下に動かしたり、一気に駆け上がったり駆け下りたり等、ランダムに動けるようにしてください。この練習を沢山することによっ て、コード進行を覚えることで、演奏する上での土台となるその曲の骨組みを体に覚えこませましょう。 。

4.コードトーンから出来るフレーズパターン(基本形編)
コードトーンを使ったフレーズ作りをしていきます。会話で言ったら「単語」にようなものと思ってください。その覚えた単語(フレーズ)をコード進行(文法)の流れに沿って各コード毎に微調整させていきます。

5.コードの連結
なるべく音域を動かさないでコードをつなげていく練習です。アドリブをする上で、ついつい音域を上下させることで変化をつけがちなんですが、ある特定の音域に拘って演奏するのも効果的です。この課題はその準備でもあります。

6.コードトーンから出来るフレーズパターン (コードの連結編)
課題4で練習した、コードトーンから出来る、いろいろなフレーズを今度はコードの連結の中で(音域が近いところで)展開できるように練習していきます。この技術は実際アドリブの中でも、モチーフの繰り返し、または展開という形で頻繁に使われます。

7.コードトーンのアドリブ(準備編)
コード連結の形のまま、(コードトーンによる)1音のアドリブ、2音にようアドリブ、3音によるアドリブと増やしていき、最後は4音(コードトーン)によるアドリブにしていきます。

8.コードトーンのアドリブ★
課題7で練習したコードの連結以外の場所でも同じような練習をして、どの音域でもフレーズが作れるようにします。あとは、それぞれのポジションを自由に移動するだけです。(音域を自由に移動するためには課題3の練習)このコードトーンのアドリブが、アドリブ演奏をする上での土台になると考えてください。土台がしっかりしていなければ上に何かものを乗せられないように、ここがしっかりしていないと、アドリブ演奏の天井は低くなると思ってください。

9.コードトーン+半音(アプローチノート) から出来るフレーズパターン
ジャズらしいフレーズの中に、アプローチノートが含まれます。課題8と課題10を比べていただければ、課題10の方がアプローチノート(以下半音)が入っ ているため、グッとジャズらしい雰囲気だと思います。今回の課題は、その準備編です。③以降は以前練習した、コードトーンから出来るフレーズに、半音を足 したものです。これにリズムの要素を足していけば、十分にジャズのフレーズとして成り立ちます。 また課題9-2では、コードトーン+半音のフレーズをコード進行に沿って演奏します。

10. コードトーン+半音 のアドリブ
課題8に対して半音を含めたフレーズです。比べていただけると、今回の課題で一段とジャズらしい雰囲気になったのが、お分かりかと思い ます。ただし、やはり今取り扱っている、コードトーン+半音という音だけでは、リズミックなフレーズは出来ても、どうしても流れるようなフレーズというの が作れません。そこで課題11以降は、その流れるようなフレーズを作れるようにするために、音階の練習に入っていきます。

第2部 コードスケールのアドリブ

コードトーンの練習によってできたフレーズの核みたいなものを、より旋律的に繋げていく練習です。

11.コードスケールの確認
ジャズ理論 によって導き出されたコードスケール(この音を弾いていれば音を外すことはないですよ的な音階)の基本的な音階を練習します。管楽器などの音域が狭いよう な楽器はルートから始まって楽器の最高音付近までいき、戻ってきて、今度は最低音付近までいって、ルートに戻ってくる。などの練習をしてみてください。

12.コード進行に沿ったコードスケール演奏
課題11で練習したコードスケールを、コード進行に沿って各音階を 滑らかに 繋げられるようにします。この練習が、コードトーンだけのアドリブでは出来なかった、よりメロディアスなラインを作る土台になると考えてください。

13.コードスケールのアドリブ(準備編)
今回の課題は、普通の8分音符を、いかにスウィングのリズムに乗せ、リズムをつけ、フレーズにしていくかの一つの練習方法です。特に②の練習になっ た時に付点のリズムにならないように気を付けてください。ポイントはスウィングを意識すぎると、どうしてもやりすぎてしまうので(付点のリズムになってし まいがち)むしろ、普通の8分音符を意識するぐらいで丁度いいと思います。

②の練習の時は、①の感覚を感じながら練習してください。最初は少し大げさかな?(①の課題のアクセントのこと)くらいでよいと思います。慣れてきましたら、徐々にその差を縮めていってください。 

14.コードスケールのアドリブ

14-1
まずは、いきなりスケールを使ってアドリブを!と言われても困ると思いますので、一定のリズムパターンを元に演奏してみましょう。ご自分でも好きなリズムパターンを書き出してトライしてみてください。
14-2
課題14-1が出来るようになりましたら、自由なリズムを元にコードスケールのアドリブを演奏してみてください。

15. コード スケール +半音 の確認
コードスケールのみだった演奏に対して、経過音を混ぜられるようにします。この経過音(以下半音)を混ぜることによって、サウンドがグッとジャズっぽくなります。

16. コード スケール +半音 のアドリブ

16-1
まずは、コードスケール+半音を課題14の時に練習した、リズムパターンを伴った形で演奏してみましょう。慣れてきましたら、ご自分で好きなリズムパターンを書き出して試してみてください。
16-2
課題16-1が出来るようになりましたら、自由なリズムを元にコードスケール+半音のアドリブを演奏してみてください。

第3部  コードトーンのアドリブとコードスケールのアドリブの統合

今まで、別々に学んできたコードトーンのフレーズとコードスケールのフレーズ を統合していきます。慣れないうちは、 コードトーンのフレーズとコードスケールのフレーズ を、ついつい自分の得意な方ばかりで演奏しがちなので、意識して五分五分位の割合になるように練習しましょう。

17.コードトーンのアドリブとコードスケールのアドリブの統合

17-1
今まで別々に練習してきた、コードトーンのアドリブとコードスケールのアドリブを今回の 課題で融合させます。まずは、小節数を決めて、それぞれのパターンを交換していき、最後にフレーズ毎の交換、最終的には一つのフレーズの中で、コードトー ン的なフレーズとコードスケール的なフレーズを混ぜられるようにしていきます。下のものは、サンプルとして書いてありますので、8小節ごとにパターンを変 えていますが、最初のうちは、一つの練習課題を(2小節交代なら、そのパターンで)1コーラス通して練習しましょう。

17-2
上記課題17-1が出来ましたら、今度は、コードトーン、コードスケール、それぞれに半 音を混ぜた形で、練習してみてください。最初のうちは、半音は上手く入れることができないと思いますが、たまに入る程度(4小節で1回くらいとか)で十分 ですので、ぜひトライしてください。

18.仕上げの練習

18-1
この課題はノンストップで8分音符で演奏し続けるのですが、その中にコードトーン、コードスケール、それぞれに対する半音、音並びのランダム性、 全ての要素を詰め込んだ形で演奏します。この課題は、アドリブ演奏と違い苦手な箇所でも演奏し続けなくてはいけないので、苦手な箇所に来ると急に演奏の自 由度が減ったりするなど、練習すべき箇所が目に見える形で分かると思います。

18-2
課題18-1で自由なメロデイライン(音の並び)が演奏できるようになりましたら、後はジャズを意識したリズム的な要素を加えれば課題18-2のよ うなアドリブ演奏になります。これは、もう立派なアドリブ演奏になります。あとは、各楽器の特徴をとらえながら 2コーラス、3コーラスと盛り上げて演奏していくことになります。

番外編1 ピアニストの左手との右手のアドリブのコンビネーション
ピアニストは最初どうしても、右手がアドリブ、左手がコードと別れてしまいがちなのですが、ピアノ演奏は単音から7~8音の分厚い和音までの、音の厚みの幅を持っています。それをうまくコントロールできるようになって、2コーラス、3コーラスと長いソロを取れるようにしていきましょう。

番外編2 ジャズにおける実践的なスケール練習法
基本的な音階練習は、もちろんとても大事ですが、それだけではジャズのアドリブの準備としては不自由分です。アルペジオや半音などを自由に混ぜられるようになって、実際のアドリブに応用が出来るようになると思います。その練習方法です。(この項目の楽譜はありません)

番外編3 課題(抜粋)のデモ演奏
18の課題のうち、より重要だと思われる8つの課題のデモ演奏をします。これは実際の練習風景に近いので必ずしも課題の内容を100%守れているわけではないと思いますが、それも含めて、より実践的なサンプルとして参考にしてみてください。

 

アドリブのコピーについて

アドリブ演奏の習得方法は幾つかあると思います。その一つに「コピーをする」というものがあります。年配のミュージシャンの方は、この形でアドリブを覚えられた方は多いかと思います。私はこのコピーすることの重要性は、もちろん感じていますが、これを行う時期は、自分である程度フレーズが作れるようになってからが良いと考えています。 「すべての芸術は模倣から始まる」という言葉があるので、一見問題ないように思われますが、この言葉を、もう少し正確に言うならば、ただの模倣ではなく創造的模倣だと思います。(ただの模倣は、ただのパクリですね)創造的模倣をするためには、やはり自分なりの感覚がないとダメだと思います。ですので 最初は、どんなにかっこ悪くてもいいから、自分でフレーズを作るという作業、それが自分の感覚を育てていくうえでとても大事なのかなと思います。その生みの苦しみ的な感覚が分かったうえで、偉人たちのフレーズを改めて聴くと、以前とは全く違った感覚で聴くことができると思います。コピーする時期はジャズのアドリブ演奏を練習しているうえで、伸び悩んでいるなぁ。と、ご自分で壁を感じるくらいの時期がちょうどいい時期だと思います。