カテゴリー: ジャズヴ―カル

ヴォーカルジャムセッションにおいてヴォーカリストが必要なスキル「4+ α 」 +α「フェイク スキャット アレンジ等を駆使して演奏を膨らますことができる。正しい状況判断によって演奏を仕切ることができる」について

(演奏を)脹らませる

個人的な意見ですが、ジャズヴォーカルの演奏で度々見受けられる、◎ヴォーカル(前テーマ)⇒ ピアノソロ ⇒ ベースソロ ⇒ ピアノとドラムの4バース ⇒ ヴォーカル(後テーマ)の形式が、あまり好きではありません。正直、演奏者も、「あ、次俺?」みたいな感じで、まるでカラオケの順番待ちのような気分になっていると思います。私としてはヴォーカルが、テーマの後フェイクコーラスやスキャット等を行い、演奏を盛り上げて「こんだけ盛り上げたんだから。後よろしくね!」的な気持ちで次の演奏者に渡すのが音楽的な行為だと考えています。

例えば伴奏がピアノトリオの場合

1コーラス  ヴォーカル 前テーマ

2コーラス  ヴォーカル フェイク(又はスキャット)  

3コーラス  ピアノソロ

4コーラス  ベースソロ

5コーラス  スキャットとドラムソロによる4バース

6コーラス  ヴォーカル 後テーマ

このように演奏することによって、演奏の半分以上の時間をヴォーカルが演奏していることになり、それはまた演奏をしっかりと支配(演奏の中心)していることにもなります。上の下線部の構成とは音楽が大きく変わってくることが想像できると思います。

フェイク

近所で行われていた野外フェスティバルでジャズヴォーカルの演奏を聴いていた時の話です。演奏されていた方は知らない方だったのですが、とても良い演奏をされていました。「マジですか?」と思うほどフェイクのメロディーラインも良い演奏でした。と、同時におかしなことも起こっていました。それは、こんなに良い演奏をしているのにも関わらず演奏者がみんなクール(いや、淡々と、、、かな)なのです。あれだけ良い演奏をしていたら少しは顔に笑みがこぼれてもよさそうなものなのですが・・・ (ここからは私の憶測になります)その理由として考えられうのは、そのグループは一緒に演奏されることも多く、その曲も今までに何度も演奏してきて、その美しいフェイクのメロディラインも何度も聞いてきたのかな?そう考えると演奏者の淡々とした表情にも納得できます。

フェイクの言葉の定義は、いろいろあるようですが、おそらく上のケースも一般的にフェイクと表現されると思います。ようするに事前にオリジナルメロディーとは別のメロディラインを用意しておくわけです。私はこれを、よくないと考えています。この状況をたとえて言うならインストのアドリブで最初から演奏が決まっている(アドリブが決まっていたらアドリブではない!)ようなものだと思っています。多くの楽器奏者は、どんなに下手くそでも、最初から自分のアドリブを演奏します。ヴォーカルだって、それで良いじゃないですか、、、ヴォーカルのみなさんもやってみませんか?即興演奏でのフェイク。

ちなみに私のフェイクの定義は
「オリジナルのメロディーラインでは表現しきれない気持ちを(フェイクメロディーに)乗せたもの」です。

ちなみに、その2)楽器の人間はアドリブをガンガン演奏するので、テーマはわりと普通に演奏することが多いです。(歌詞(言葉)がないので、あまりにも崩してしまうと何の曲だか分からなくなってしまう)ですので、本当にセンスの良いフェイクラインを聴くと、自分がそんな演奏が出来ないので単純に「お~スゲー」と思ったりします。

スキャット

これも単純に私の好み(お勧め)を言わせてください!
スキャットには2種類あると思います。一つ目は「聞かせるスキャット」これは楽器と同じように1コーラスまるまるスキャットを行うパターン。二つ目は、主に4バースなどで使うスキャット。これは主にドラムとのやり取りが多いと思いますが、これはどちらかと言えば、スキャットは(その瞬間の)演奏のメインではなく、「ドラムソロを引き出すための手段」とも考えられます。

お勧めは、この二つ目の方です。中でも4バースはスキャットは4小節ごとですから、まあ、頑張れば1フレーズ、ないし2フレーズ。転調の激しい曲を選ばないように気をつけて、よく周りの音を聞きながら調性の音階にリズムをつけてスキャットすることは「意外と何とかなるものだ」と経験上感じています。大事なのは、あくまでもこれは「ドラムソロを引き出すための手段」と割り切ってしまうことです。それと「自転車を転ばないで乗れるようになりたい!」というのは無理な話なのと一緒で、ある程度は失敗をして恥ずかしい思いをしてしまうのは、しょうがないことと考えてください。ぜひスキャット試してみてください!絶対に楽しいと思いますよ。

「踊るアホーに、見るアホ―。同じアホなら踊らな損々。ドゥ~ワ~」

アレンジ

ここで言うアレンジはリズムについてです。(厳密にはコードを変えたりするのもアレンジですがセッション的に演奏するのは難しいので省きます)

アレンジで分かりやすい(受けが良い)のは元曲とは真逆のリズムで演奏することです。

元がテンポが遅い曲なら速く、速い曲なら遅くです。

ジャズでスタンダードチューンとして演奏されている曲の中には、もともとは遅い曲だったのに、なぜだが理由は分からないけどジャズでは早く演奏するのが一般的なイメージという曲が幾つかあります。これは一番最初は、元曲と真逆のイメージで演奏していたのに、いつのまにか(いろいろな人がそのアレンジで演奏しているうちに)そちらがジャズの中では定番のイメージになってしまった。ということだと思います。

ぜひ 「次の定番アレンジ」を目指して、いろいろと試してみましょう!

アレンジとして元曲のイメージとは真逆のリズムを使うというのを説明しましたが、もう一つのアレンジ方法として、微妙な差を表現するというのもあります。

Annie Lennox – Georgia On My Mind (Live)

この演奏をお聞きください。彼女はローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガーにおいて第93位だそうです(恥ずかしながら私は彼女のことを知りませんでした)ジャズの一般的なこの曲のイメージとは大きく違います。彼女の場合は、おそらくこれを作りこんだアレンジとして演奏していると思います。これを「ジョージア、4分打ちで演奏してみない?」的なノリで即興的にセッションでやってみると面白いと思います。もちろん、その時に「伴奏が変わるだけで歌はあまり変わらない」というのは、あまりよろしくないので、フェイクをガンガン使って、その変えたリズムによる新しいイメージに添えるようなフレーズが出して演奏者を引っ張りできたら最高に楽しいと思いますし、それがジャズの醍醐味だと思います。ぜひ試してみてください!

正しい状況判断の習得法

イントロの数、ソロのまわし方、後テーマの戻る場所、曲の終わらせ方(エンディング)等、ジャムセッションにおいて、これら構成について、必ずしも曲ごとに決まっているわけではありません。その曲の構成(形式)や、その時に演奏する形態(トリオなのか、カルテットなのか、はたまたデュオなのか?)によって、またそのジャムセッションの主催者(会)の意向(そのグループが大事にしていることは何なのか?)によって大きく変わってきます。演奏の途中でも自分の描いていた青写真通り進まないこともよくあります。(例えば後でドラムとスキャットで4バースを行おうと考えていたのに、ベースが自分のソロを飛ばしてドラムのコーラスソロに回してしまった…など)いろいろな条件や音楽の流れ等をトータル的に考え適切な判断が出来るようになるには、それなりの知識や経験が必要になりますので、一つ一つそれらを積み重ねていってください。

また他の人が演奏している時も、自分が演奏している時と同じように「自分だったら、こういう判断をする」など想像しながら聞いてみてください。もしその想像と実際の演奏が違った場合は、「なぜ違ったのか?」(自分の想像と実際の演奏が違っても、全く問題ない場合と、問題がある場合両方あります)間違っててもいいので、とりあえず一度自分なりの答えを出してみてください。その後もし可能でしたら、その場にいるセッションに慣れた人に確認してみてください。(人に聞く前に一度自分なりに答えを出すことは、とても大事です!)その一つ一つの体験のみが、セッションに対するノウハウの習得法だと思います。

ヴォーカルジャムセッションにおいてヴォーカリストが必要なスキル「4+ α 」その4「エンディングが作れる演奏や身振りで指示できる」について

ジャズの演奏の場合、エンディングはイントロ同様、「この曲には、このエンディングで」というのは、ほとんど決まっていません。ほとんどのケースの場合、曲の最後の方の一部を2~3回繰り返すなどして終わったり、割合的には少ないですが、繰り返し等せずに、そのまま終わったりします。また通常のジャムセッションでは、演奏する前にエンディングを、どうするか?は説明しない(説明する必要がない)のが、ほとんどです。これは多くの場合、エンディングの選択肢は多くても3択程度なので、その中から、どれを選んだのか?を伝えるの方法は、その場での演奏などで十分表現できるからです。またジャムセッションでは「〇〇(曲名)を〇〇のリズムで演奏してみない?」的な、その場のノリでアレンジを決めて演奏したりすることも珍しくないので、そのような時は即興的にエンディングをつけられるスキルは必要になってきます。ただしセッションでは、ある程度「エンディングは無事に終われればオッケー」的な面はあると思いますので、そんなに難しく考える必要はないかと思います。

注意)同じ曲でもリズムが違うとエンディングは当然違ってきます。(イントロにも同じことが言えます)

代表的なエンディングパターン
① コーラスの29~30小節目を3回繰り返す(1コーラス32小節の場合)

② ラスト4小節を2~3回繰り返す(通称逆循)

③ 繰り返ししないで1回で終わる 

どのパターンも インテンポのまま最後まで演奏したり、最後だけリタルダンドをかけたり、最後の音をみんなでバシッと合わせたりする(通称 カットアウト)など、終わらせ方にも幾つかのバリエーションがあります。

注意事項
②の場合、繰り返す時にメロディーを上げて「繰り返しますよ~」というメッセージを伝え、終わる時はメロディーを元に戻して短くスパッと終わる場合が一番多いパターンだと思うのですが、曲よっては、2回目も3回目もメロディーは変えず、最後(3回目)だけメロディーを上げて終わるなどいうパターンもあります。(少しづつ覚えていくしかないと思います)

よくヴォーカル方がエンディングで指を2本立てて、エンディングの回数を伝えようとしていることがあります。ただ、これは「あと2回」(合計3回)なのか。全部で2回繰り返すのかが分からない場合がほとんどです。結局は演奏者はフレーズを聞いて判断していますので、指での「2回」サインはあくまでも、添え物的なものと考え、しっかりとフレージングで伝えられるようになってください。

エンディングについて明文化することは、まずできないと思いますので、(実際のところ、法則性が、あるような、ないような、、、)習得法は、一つ一つセッションなどで試しながら、なんとなく「これかな?」と思えるようになるまで経験をひたすら積んでいくしかないと思います。

ヴォーカルジャムセッションにおいてヴォーカリストが必要なスキル「4+ α 」 その3「適切な箇所から後テーマに入れる」について

(ジャズヴォーカルの)ジャムセッションの基本の形は テーマ ⇒ 間奏 ⇒ テーマ  になります。またジャズのセッションにおいての大前提は、「曲が始まったら出来るだけコーラスを繰り返す」という」ことで成り立っています。ですので、ジャムセッションで良く演奏される8割がたの曲は1コーラスが32小節で出来ていて、それらの曲の場合テンポが速ければ速いほどコーラスの頭戻り、スローの曲などテンポが遅ければ遅いほど後テーマはコーラスの途中(サビまたは後半)戻りになります。

※「後テーマはサビ戻りでお願いします」この言葉を、よく聞くのですが、たまにサビのない曲(Moon Riverなど)でも、この言葉を使っている方が、いらっしゃいます。意味は通じるのですが、サビのない曲の場合は「後半から戻ります」が正しい言い方になります。

また1コーラスが長い曲(Lover Come Back To Me や Love For Sale など)は、テンポが速くてもコーラスの途中から戻ることが多いです。

テンポが速ければ速いほどコーラスの頭戻り、テンポが遅ければ遅いほどコーラスの途中(サビ戻り、後半戻り)が基本。ただし1コーラスが長い曲は、テンポが速くてもコーラスの途中(サビまたは後半)戻りが基本

例外的なケース

スローの曲などでは、基本的には間奏はコーラスの半分までですが(1コーラスが長い曲も)、そのソロが、ものすごく内容が良く、かつ演奏者本人が、まだ演奏を続けたがっているような場合は、それが許されるようなシチュエーションなら、そのまま演奏してもらうのも選択肢の一つです。(また、そうするのが望ましいと個人的には思います)

もしそれがスローの曲で、そういう事態(間奏が伸びた)が起こった時の対処例
①1コーラスが終わるころに合図を出してサビまたは後半に半ば強引に戻る
②他の演奏者に、コーラスの半分まで更に演奏してもらう。

もしそれがアップテンポの曲で、そういう事態(間奏が伸びた)起こった時の対処例
①スキャットができる場合、コーラスの前半をスキャットで演奏する。(又は他の楽器との4バース)
②ドラムがいる場合、コーラスの前半をドラムとデュオ演奏。(ピアノとベースには後半から入ってもらう)

また、通常のワンコーラス32小節の曲でも、一緒に演奏している奏者の誰にソロを取ってもらうか?(慣れてきたら、ソロを取る人は必ずしも一人とは限りません)その適切な判断をした後に後テーマを演奏する必要があります。

ヴォーカルジャムセッションにおいてヴォーカリストが必要なスキル「4+ α 」 その2「どんなイントロでも入れる」について

ジャズの独特の習慣の一つとして、「ほとんどの曲でイントロは決まってなく、各演奏者(主にピアノやギター)の裁量に任されている」というのがあります。特にヴォーカリストの方にとって、同じ曲を演奏するのに、伴奏者が変わるたびに(時には同じ人が演奏していても)イントロが違うことに戸惑う方は多いと思います。

目安としては「テンポが速ければ速いほど8小節、遅ければ遅いほど4小節」です。

テンポが速いともいえないし、遅いともいえないような、判断しかねるようなテンポの時はとりあえずは4小節で待ってください。それで、「入ってきて!」的な合図がない時は8小節と待つのが良いでしょう。

※弱起と呼ばれる曲(枯葉など小節の頭からではなく、その前の小節から、ひっかけて始まるような曲)の場合、そのひっかける部分の拍数(枯葉の場合だと3拍)をイントロの最後の小節に入れ込む。イントロを演奏する奏者は、そのひっかける部分の拍数分より、さらに前にポイント(さあ入ってください!という合図)を入れるのが一般的。例)枯葉を8小節のイントロで演奏した場合、7小節目の4拍目ウラで演奏をまとめたりします。

ボサノバやラテンなどスウィング以外のリズムの時は、比較的ゆっくりなテンポでもイントロは8小節で演奏することが多いような印象があります。これは、やはりジャズミュージシャンにとってスウィングやスローがメインのリズムになると思いますが、それ以外のリズムを演奏する時は、空気(ジャズの雰囲気・フィーリング)の入れ替え・チェンジをする意味合いもあるのではないかと思います。(もちろん時間などの都合で少しでも時間を短縮したい場合もあると思うので、4小節でイントロが渡される可能性も十分にあります)

定番(又は有名な)のイントロがある曲

例えば「Take The A Train」の場合、どんなに速いテンポでも、この定番のイントロを使ったら基本は4小節で始まります。ですので、定番のイントロがある曲は少しづつ覚えていきましょう。

If I Were A Bell
Lullaby Of Birdland
satin Doll
Take The A Train
Wave 

Double Time/Half Time/Double Time Feel/Half Time Feel について

以下の4つは、リズムに対する用語ではなく、アレンジ等する時に使用したりする用語です。
それぞれの言葉が非常に似ているせいなのか、演奏者の中でも人によって言葉の定義が違い混乱が見受けられます。定義づけがはっきりしていない中、言葉とその意味を丸暗記しただけでは実用的ではないので、具体例をしっかりと頭に叩き込み自部の言葉で理解し説明できるようにしましょう。

※以下の2つは(ダブルタイムとハーフタイム)アレンジに使われる用語です。演奏する前に「ここからダブルタイム(またはハーフタイム)でお願いします」という感じで使用します。

Double Time 
(通称 倍テン ダブルテンポと呼ばれることもある) テンポが倍になること。
It Don’t Mean A Thing 
ヴァースの最後の小節 (0:38部分) を、倍にしたテンポで2小節分のドラムのフィルインでコーラスに入る。(残念ながらこの演奏、厳密に言うと2倍ではないのですが… でもこのダブルタイムのきっかけ作りって正確に倍のテンポで演奏するのって結構難しいのです!)

Half Time   
(通称 半テン ※ただし私自身は実際に聞いたことはありません。ネットで調べていく中で、この言葉を使っている人は複数いました) テンポが半分になること。 こちらはアレンジ的に使われることがほとんどです。(セッションではあまり使わないかな… そして参考音源も見つからない…)

※以下の2つは(ダブルタイムフィールとハーフタイムフィール)1拍をどのように感じて演奏するか?を表す言葉です。

よく使われるシチュエーションとして

①スローで演奏していたのを、1小節の中で拍の感じ方を倍で刻み演奏をアップテンポにする⇒ダブルタイムフィール(ただし1小節にかかる時間は一緒)

②アップテンポで演奏していたのを、1小節の中で拍の感じ方を半分で刻み演奏をゆっくりになったように感じさせる⇒ハーフタイムフィール(ただし1小節にかかる時間は一緒)

両方とも1小節にかかる時間は変わらないので、演奏者の判断で事前に打ち合わせなしで演奏することが可能です(特に間奏時でのダブルタイムフィール)

またその応用で、アレンジとして最初からスローの曲を早く演奏する時、または速い曲をスローで演奏する時などにも、この2つの言葉は使うこともできると思います。(あまり一般的な使われ方ではないので、これらの言葉だけでは伝わらないかもしれません。もし伝わらなかった時でも違う言葉で伝えられるように、しっかりと自分の言葉で理解しておくことが大切です。

Double Time Feel * (こちらをダブルタイムまたは倍テンと呼ぶ人もいる)
1小節をテンポを上げて2小節に感じるように演奏すること。ただし、1小節にかかる時間は変わらないので、あくまでも早くなった感じ。(だからダブルタイムフィール。ダブルタイムっぽく感じられるって覚えておけばOK)一般的にはスローの曲をアップテンポな雰囲気にする時に使用する。

When You Wish Upon A Star <Stardust Revue>
アカペラによる演奏。この曲の一般的に出回っている楽譜だと通常 When you wish up- で1小節だが、この演奏は2小節で演奏しています。

Half Time Feel *
2小節をテンポを下げて1小節に感じるように演奏すること。ただし、1小節にかかる時間は変わらないので、あくまでも遅くなった感じ。
一般的にはアップテンポの曲をスローな雰囲気にする時に使用する。

Tea for Two <Bria Skonberg>
先に紹介したナットキングの枯葉でのハーフタイムフィールの使われ方は、あくまでも楽譜の読み方です。演奏での使われ方の見本は短いですが、この演奏の 2:05 – 2:09 の間の演奏になります。この演奏は4拍子と3拍子が入り乱れる複雑なアレンジで、更にこのハーフタイムフィーリングを使ってから(元のフィールに戻して)フェイクコーラスに展開していくという、かなり凝ったアレンジになっています。

Autumn Leaves <Nat King Call>
この演奏の1小節は、この曲の一般的に出回っている楽譜だと2小節分。ただしこの曲は楽器の演奏でアップテンポでの演奏が有名になりましたが、元々はスローの曲なので、本来はこの演奏の雰囲気がオリジナルに近いです。このように、どのヴァージョンがオリジナルなのか?よりも、どのヴァージョンが一般的なのか?が大事だったりすることがよくあります。

※1 Double Time Feel とHalf Time Feel は共にあくまでも1拍をどのように感じるか?を表す言葉です。アレンジとして使う時は「この楽譜をDouble Time Feel(又はHalf Time Feel)で〇〇のリズムでお願いします」というのが丁寧な使い方です。ただし、ジャズのセッションでは早くなる(風)んだからスウィング、遅くなる(風)んだからスローという事は、まあ予測できるので省略されることが多いです。だからミスティーをサンバで演奏したい時などは「この楽譜をDouble Time Feelでサンバのリズムでお願いします」が一番確実な伝え方です。(まあ、演奏者も「ミスティをサンバでお願いします」で、だいたい分かるのですが、たまに曲によっては演奏してから拍の感じ方を間違えて、「あれ?」っていう時があります。

※2 この4つの言葉と類似の現象として、テンポを3倍にしたり1/3にしたりするものがあります。こちらは特に決まった言葉はないようです。

After You’ve Gone <BENKO DIXIELAND & RÉKA KOÓS>
テンポが88くらいで始まりますが 1:45 のドラムをきっかけに、ちょうど3倍のテンポ264に変わります。(ただしコーラス部の拍の感じ方は、テンポが速くなってからはダブルタイムフィールで演奏されていますので、純粋にテンポが3倍になったわけではありません。)また 2:53 でのトランペットの 3連フレーズをきっかけに、だいたい1/3の元のテンポとフィールに戻っています。

You and the Night and the Music <Emmet Cohen w/ Veronica Swift>
この演奏は最初、ハーフタイムフィーリング テンポ61くらいで始まり 1:18 のベースをきっかけに約3倍のテンポになっています。(拍の感じ方は一般的なものになっています)その後 3:57 前後でいったん演奏を止めてからテンポとフィールを最初に戻し少し間奏的なものを挟んでから最後の8小節を演奏します。※さらにこの演奏では 4:19 あたりからベースがハーフタイムフィーリングから、この曲の一般的な拍の感じ方に変えてエンディングに突入しています。

テンポを3倍にする時テンポが速すぎて歌詞が上手く歌えないような時は、上の2つの参考音源のように純粋にテンポを3倍にするのではなく、テンポが変わるどちらかの方をダブルタイムフィールまたはハーフタイムフィーリングにすると音楽的に解決できます。

コーラスの小節数について

ジャズのスタンダードチューンの大部分はコーラスは32小節で出来ています。
他にも1コーラスの小節数が

12小節 Blue Monk
※ Blue Monkなど一般的にジャズの中で「ブルースの曲」と呼ばれているような曲は1コーラス12小節で展開していくと音楽的に展開の感覚が短かすぎるので12小節×2を一つのまとまりで演奏されることが多いです。
16小節 I Fall In Love Too Easily
24小節 Song For My Father
28小節 Left Alone
34小節 Smile
36小節 All The Things You Are
38小節 Moon River 
40小節 One Note Samba
48小節 I’ll Remember April Night And Day Route66(ブルース形式を基盤として作られている曲なので12小節×4とも考えられる)
56小節 Speak Low
64小節 Love For Sale Nica’s Dream
72小節 It’s All Right With Me

など(これ以外にも)多くの形式があります。

ジャムセッションでは「コーラスを出来るだけ繰り返して演奏する」という前提があるので、演奏をするのに1コーラスが何小節なのか?は、とても大事な要素になります。

ジャムセッションに使われる主な用語についての解説(製作途中)

※ 各用語の使用例

セッション(ジャムセッション)
演奏するにあたって、必要最低限の準備(リードシートまたは一段譜と呼ばれる簡単な楽譜だけで演奏するなど)で各奏者が即興的に演奏すること。

※「このアレンジは難しいからジャムセッションで演奏するのは少し無理があるかな…」

リードシート(一段譜 メロディー譜とも呼ばれる)
メロディーとコードだけ書かれている楽譜。ジャムセッションで使われる楽譜のほとんどがこの形式の楽譜。

イントロ
曲を始めるために演奏される短い序奏部。一般的にテンポが速ければ速いほど8小節で遅ければ遅いほど4小節。速いか遅いか迷う時は、まずは4小節で待つ。(8小節で待っていたら4小節の時に対応できない)また、ボサノバやラテン等の字スイング以外のリズム時は8小節でのイントロが多い。またジャズでは数曲の例外を除いて決まったイントロはないので、主にコード楽器(ピアノやギター)を担当する演奏者が独自でつけるので、同じ曲でも10人演奏者がいたら10通りのイントロになると思ってください。

※「イントロみんなで演奏しましょうか!」ラテンなどピアノ一人で演奏するのがしんどいと感じた時は他のメンバーを巻き込む。

テーマ(前テーマ 後テーマ)
他ジャンルの音楽ではメロディーと言われるもの。ジャズの場合、曲そのものが演奏の「お題」的な側面があるので、例えるとテレビの討論会などで使われる「本日のテーマは!」と同じような意味だと思ってください。一般的には演奏の最初と最後に、このテーマを演奏する。構成などの説明の時に、その説明が最初と最後どちらのテーマの説明をしているか、はっきりさせたい時に前テーマ 後テーマと区別して言う。(一般的には前テーマとは言わないかな… 最初のテーマとか言ったりしてます)

※「後テーマ、サビまでドラムとデュオで演奏したい」

エンディング(アウトロとも言う)

曲を終わらせるために演奏される部分。ジャズでは曲の一部を2~3回繰り返して終わることが多い。(エンディングを繰り返しなしで1回でバシッと終わらせるのは例外的な演奏となるので、セッションで、そのようにして終わらせるにはコツが必要になります)

カットアウト

ヴァース

この言葉は音楽の中でもジャンルによって使われ方が違うようです。ジャズの世界では本編に入る前の歌詞がついている前奏的な部分を指します。有名なヴァース Stardust <Nat King Cole>  0:13 ~ 1:12   ※ヴァースはルバート(テンポが自由に揺らして演奏すること)で演奏することが多いせいか、この2つの言葉を混同して使ってしまう人が多く見受けられますので気をつけましょう。

※「楽譜にはヴァースが書いていますけど、それはカットでお願いします」

コーラス
ジャムセッションで使われる用語としてのコーラスは、合唱やハモルことではなく、テーマ部の最初から最後までの部分で、ジャムセッションでは基本的に、この「コーラスを繰り返して演奏させる」という前提で演奏することによって即興演奏を行います。

※「1コーラスと2コーラス目、続けてヴォーカルが演奏しちゃいます」

コーラスの小節数について

インタールード
一般的には間奏と訳されますが、ジャズの場合、普通のアドリブソロのことも間奏と言ったりしますので混同されがちです。ジャズの中で有名なインタールードといえば、A Night in Tunisia があります。この演奏の 0:50 ~ 1:06 部分がインタールードと呼ばれているもので、通常この部分はコーラスには数えません。(アドリブソロを取る時に、この部分は演奏されません)

サビ(ブリッジ)
※「ラテンのリズムでサビだけスウィングでお願いします」

前半 後半
※「最初の1コーラス前半をピアノとルバートで演奏して後半からインテンポでお願いします」
逆循
※「エンディングは逆循でいきます」

フェイク(コーラス)
オリジナルのメロディーラインを演奏者が変えて演奏する事

スキャット

ソロまわし

4バース等


セカンド・リフ
※「セカンド・リフ(のコーラス)が終わっても、ドラムは、そのままオープンソロで続けてください」

ヴォーカル・ピックアップ(弱起)
※「ヴォーカルピックアップで出ます。ピアノ、コードください」

構成マーク

リハーサルマーク

インテンポ
※「ヴァースをインテンポでベースとデュオで演奏したいです。ピアノとドラムはコーラスの頭から入ってきてください」

ルバート
※「後テーマ、ヴォーカルはサビからルバートで演奏して、その後のAメロはインテンポでお願いします」

リタルダンド(省略記が rit. のためリットとも呼ばれる)
「エンディングは逆循で3回目はリットしてください」

アテンポ

BPM
Bets Per Minute の略。意味は1分間の拍数を表しテンポと同義語。パソコンを使った音楽制作で、よく使われる言葉。最近はジャズでも、こちらの言葉を使う人が少しづつ増えているような気がします。

デュオ(の形態)
ギターとのデュオ

ピアノとのデュオ
ベースとのデュオ
ドラムとのデュオ
その他の楽器とのデュオ

ドラムソロ(の形態)
4バース 
8バース
コーラス ソロ
オープン ソロ
ヴァンプ ソロ

ヴォーカルジャムセッションにおける各パートに必要なスキル

※上部をクリックすると印刷できるようになります。

必要なスキルのヴォーカルのところで、+α としたのは必ずしも、その部分がないと「ジャズヴォーカルとは言えない」と、言うわけではないからです。あくまでも、当サイトが「この部分、すごく面白いですよ!」とお勧めしている部分ということです。



補足 ヴォーカルセッションに必要なスキル

ヴォーカリストに必要なスキル 4+ α

必要最低限の説明

②どんなイントロでも入れる

③適切な箇所から後テーマが入れる

④エンディングが作れる、演奏や身振りで指示できる

+α フェイク スキャット アレンジ等を駆使して演奏を膨らますことができる。正しい状況判断で演奏を仕切れる。
   

 

ジャムセッションで取り扱う主なリズムについての解説

リズムの呼び方については統一的なものがなく、特にジャズ以外のリズムを演奏する時(ラテン系やファンク系の音楽等)は言葉の使い方、各演奏者のイメージがバラバラです。ここでは、ジャズのジャムセッションで、よく使われるリズムをスマホやタブレット用のアプリ「I REAL PRO」の中で使われているリズムの呼ばれ方を中心に使って説明していきたいと思います。

Up Tempo Swing (Fast Swing)
「I REAL PRO」の設定はテンポ240になっていますが、感覚的にはテンポ200以上はアップテンポと呼んでいいと思います。 

Medium Swing
テンポ140前後のイメージで良いと思います。

Slow Swing
よくバラードと呼ばれているジャズの中でよく使われるスローとは違うリズムです。簡単に説明すればミディアムテンポで演奏していたものを、そのまま遅くしたものとイメージしてもらっても構わないと思います。テンポは80位をイメージしてください。

New Orleans Swing or Second Line
あまり使われることがないリズムですが、最初のワンコーラスとかに使ったりすれば楽しさ倍増だと思います。
ただ各演奏者の持っているイメージがバラバラなので、このリズムを使う時は出てきたリズムを楽しみましょう!

Waltz (Jazz)*
ジャズミュージシャンが普通にワルツと言ったら、こちらのリズム。ジャズワルツとは通常言わないです。

Fly Me To The Moon
ジャズのワルツでの演奏。下の同じ曲でのイーヴンでの演奏との違いを聞き取ってみてください。

Waltz (Even)*
通常のセッションで使うことが、あまりないリズムだが、Fly Me To The Moon のヴァース等、曲の一部をこちらのイーヴンワルツで演奏したりするなどアレンジ的に使用したりすると雰囲気が変わって面白いと思う。

Fly Me To The Moon <Ella Fitzgerald>
Verseはルバートで演奏しているが、コーラス(0:46~)をイーヴンのワルツで演奏しています。

6/8*
正直「3拍子と、どう違うか?」を説明できないです。ただし、リズムアレンジなので4拍子の曲で1小節を二つに割って、それぞれを3拍子にした場合は、元々の一つのまとまり(例 Fly Me To The Moonでいったら、最初の1小節目のFly Me To Theの部分)をはっきりさせるために、6/8でと言わないと、(単純にワルツでお願いしますと言うと)違うリズムになってしまいます。

Bye Bye Blackbird <Joe Cocker>
ヴォーカリストの発声、テンポ、バンドの編成など、あらゆる面でロックやブルース色が強くなる例
My Romance <Venessa Perea>
こちらはジャズのイメージで聞こえてくる6/8(途中で4拍子との変換あり)同じ6/8でもテンポや編成でかなりイメージは変わってきます。

※ *印のついている上の3つは厳密にいうとリズムの種類というよりは拍子の違い。「I REAL PRO」にこの3つのリズムパターンがないのは、スウィングのリズムで単純に拍子を3拍子にすればよいだけだからと思われる。ただし、実際のジャムセッションでは「〇〇(曲名)をワルツでお願いします」とリズムパターンの一つとして使われます。

Slow ( Jazz Slow , Ballad Swing , Ballad )

Even Slow

12/8 Slow

Summertime <Janis Joplin>
この演奏はジャズでよく演奏される時に使われるコード進行や構成等を少し変えてありますので(キーの設定もジャズとは大きく違います)単純にこの曲を12/8で演奏したからっといってこの曲の雰囲気にはならないです。しかし、やはりこのリズムで演奏すると、ロックやブルースの雰囲気に近くなるのは確かです。

Latin
厳密にいうと、ラテンとはリズムの呼び方ではなく(音楽の)ジャンルの呼び方。ラテン音楽と呼ばれているものの中に幾つものリズムの種類があります。ただし、ジャズの中でラテンといったら概ね「アフロ・キュ―バン」を指すことが多いかな… 

Almost Like Being In Love <Eydie Gorme>

Afro 12/8
ラテン(アフロ・キュ―バン)は1拍が等分割なので(通常の八分音符)1拍を3分割したい時はこのように言うと伝わります。
※ 「I REAL PRO」のリズムパターンの中にアフロというリズムが一つしかなかったので、筆者も最初、ラテン=イーヴン アフロ=12/8 という認識でいたのですが、それだけでは、どうやら不完全らしいです。これはラテンという言葉にどこまでの意味を含ませるのか人によって違うために起こることで、よくあることです。もし言葉の食い違いなどが起こった場合でも、しっかりと一つ一つの用語を理解して自分の言葉で説明できるようにしておくことをお勧めします。

Bossa Nova

Samba

早めのボサノヴァとサンバは違いが分かりずらい(そもそも違いがあるのか?)という問題がありますが、筆者の親しくさせてもらっているドラマー曰く「ジャズの中では概ね一緒で構わない」とのことです。(厳密には当然違うということですが)

It Don’t Mean A Thing <Diane Schuur>
この曲を(このタイトルで)サンバのリズムで演奏してしまうという意欲作。
※早めのボサノヴァとサンバの違いが分かりづらいことがあると書きましたが、この演奏は誰が聞いてもサンバとすぐ分かる演奏。

Even 8th

Even 16th

以下はリズムの呼び方というよりも音楽のジャンル名を伝えることによってイメージを伝えている感じ。
特定のリズムパターンがあるわけでもないのでイメージは演奏者によりバラバラなので、必ずしもイメージ通りに演奏してもらえないのは、セッションでは致し方のないことです。それよりも、以後一会の精神で出てきたリズムに対して自分が反応していきましょう!

Funk

Reggae

Rock   
Route66 <Rolling Stones>
たまには、こんな感じで演奏しても盛り上がって面白いかもしれません!

Shuffle
On A Slow Boat To China <Bette Midler And Barry Manilow>
Swingのリズムの時とヴォーカルは基本的には変わらないので、手っ取り早く盛り上げたいときには良いかも!
※リズムをロックにする時は8分音符がイーヴンになりますので歌い方、演奏共にSwinの時と変える必要があります。

ヴォーカルジャムセッションの進行について

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